進行期がん患者様を対象として、血液中を流れるがん細胞(循環腫瘍細胞:circulating tumor cells, CTC)からネオアンチゲン候補を同定する方法を報告した論文について、国際誌 Frontiers in Immunology に外部研究者によるコメンタリー(論説記事)が掲載されました。コメンタリーは、ブラジルのFederal University of Amazonas所属のMaxwel A. Abegg先生によるもので、本研究の位置づけや意義を整理しつつ、今後の応用可能性について検討した内容となっています。
このコメンタリーでは、診断目的の白血球成分採血(diagnostic leukapheresis)を用いてCTCを集め、その細胞をもとにした「全細胞ワクチン」と、同じCTCから得られた遺伝子情報にもとづく個別化mRNAワクチンを組み合わせるという、二段階ワクチン戦略の研究仮説が提案されています。いずれも、がん細胞由来の抗原を利用して免疫応答を引き出すことを目指す概念であり、既存のチェックポイント阻害薬(PD-1阻害薬)との併用の可能性にも言及されています。
一方で、Abegg先生自身が記載しているとおり、この戦略は現時点ではあくまで「仮説」にとどまっており、まずは動物実験などの前臨床研究、その後に段階的な臨床試験を通じて、安全性や実現可能性、有効性の兆候を慎重に検証していく必要があるとされています。
なお、今回ご紹介しているコメンタリーや元の論文は、いずれも進行期がんにおけるネオアンチゲン探索やワクチン開発の可能性を検討する研究報告であり、個々の患者さんの診断や現在の治療方針を直接変更するものではありません。研究の詳しい内容につきましては、以下のPDF(英語)に加え、コメンタリー掲載ページおよび原著論文に関する当サイト内お知らせをご参照ください。


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